歯周病の治療

ドクターより

日本歯周病学会 歯周病専門医より一言

「歯科治療の本質は予防」であると私は考えております。
東京医科歯科大学を卒業し大学病院で歯周病を勉強し、歯を残すために必要な「本物の技術」と、患者さんとともに守る「予防」にこだわっています。
歯周病は「軽度」「中等度」「重度」の3段階の進行度に分けられます。軽度歯周病の治療においては、どこの歯科医院でも基本的な治療をしっかり行うことで多くのケースで改善します。

ただ、中等度や重度に進行した歯周病の治療では、SRPなどの技術力、歯周組織再生療法、抜歯の判断、といった様々な治療や判断、選択肢において、歯周病専門医は卓越した知識・技術・経験・判断力を持っています。
日本歯周病学会 歯周病専門医は、予知性の高い歯科治療やインプラント治療といった、包括的な歯科治療のスペシャリストです。
日本歯周病学会は、専門的知識と技術を有する歯科医師を育成し、国民の口腔保健の増進に貢献することを目的として認定医、専門医、指導医等の資格を設けております。歯周病専門医は、5年以上、あるいは歯周病認定医を取得後2年以上研修施設で研修して、専門的な歯周治療の知識と技量をマスターした上で、専門医試験に合格した歯周病学会員のことです。
以前は、歯周病は口の中だけの病気と考えられてきました。しかし近年では、歯周病は、脳血管疾患、心臓疾患、糖尿病など、全身の病と密接な関わりがあることがわかってきており、歯周病が全身に与える影響、また全身の健康状態が歯周病に与える影響について研究が進められています。

歯周病とは

日本人の歯を失う原因の1位

歯周病(ししゅうびょう)は以前は歯槽膿漏(しそうのうろう)と呼ばれていたお口の病気で、歯周病とむし歯を合わせて「歯科の二大疾患」といわれています。
歯周病は歯ぐきから血が出る病気程度に思われがちですが、実は日本人の歯を失う原因の1位は歯周病で、成人の8割以上が歯周病になっているともいわれています。さらに歯周病は糖尿病や心疾患など、全身の重い病とも密接な関係がある恐ろしい病気です。

歯周病の原因

歯周病菌が直接の原因

歯周病は、直接的にはプラーク(歯垢)に潜む歯周病を引き起こす原因となる細菌(歯周病菌)によって引き起こされます。そしてさらに、その人の持つ「体質」や「生活習慣」など様々なリスク要因が絡み合うことで、歯周病の発症や、歯周病のの進行の程度などに影響を与えていきます。
歯みがき(ブラッシング)や、自分では除去し切れない部分は、歯科医院で定期的にクリーニングする必要がありますが、これらを怠っていると、歯の表面にはどんどんプラーク(歯垢)がたまってきます。
このプラークはやがて歯石となり、ご自身での除去は難しくなります。プラークは、食べ物の残りかすなどではなく、おびただしい数の細菌がネバネバとした物質(バイオフィルム)を作り出し、塊になったものです。これらの細菌は単純に歯を汚すだけでなく、歯周病という病気を引き起こしてしまうのです。

歯周病の症状

歯周病の進行

健康な歯と歯茎では、きゅっと締まった歯ぐきと歯を支える骨(歯槽骨)が歯を支え、歯ぐきもピンク色で健康的です。しかし、ブラッシングを怠ったりしてプラークを放置していると、歯周病の原因となる最近は、歯と歯茎のくっついている部分をはがしていってしまいます。このはがれた隙間の部分を「歯周ポケット」とよびます。

歯周ポケットが深くなることで、ご自身でのプラッシングでは、歯周病の原因となる細菌を除去することが難しくなってきます。歯ぐきから血が出るなどの変化も起きてきます。
歯周病の原因となる細菌には「嫌気性」といい、空気を嫌う細菌が多く存在します。これら嫌気性の最近は歯周ポケットの奥へ奥へと入り込んでいってしまいます。

これらの細菌は「毒素」を出します。この毒素の感染から逃げるように、歯を支える骨(歯槽骨)がだんだんと減っていって(退縮)しまいます。やがて歯はグラグラと動くようになり、最後は脱落してしまう恐ろしい病気です。

サイレント・ディジーズ

歯周病は相当進行するまでは、歯茎から血が出る程度で目立った症状はありませんが、歯茎の下で着実に進行していき、気づいたときには「手遅れ=抜歯になる」ということも珍しくない病気です。このような特徴から「サイレント・ディジーズ(静かなる病)」ともいわれています。歯を失えば、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどにしなくてはならなくなってしまいます。

歯周病と全身疾患

近年、歯周病と全身疾患の関係が明らかになってきています。歯周病は、肥満、糖尿病、心臓病、誤嚥性肺炎、早産など、様々な疾患の原因となったり、相関関係が発見されたりと、様々なことが明らかになってきました。歯周病は口腔内にとどまらず、全身の健康を脅かす病気でもあるのです。歯周病の原因菌や、菌が出す毒素、炎症性物質が血管を通して全身を駆け巡り、様々な疾患を引き起こします。

歯周病の治療

歯周病の検査

X線撮影

歯周病の進行を調べる上でX線撮影は大切な検査です。X線を使用することで歯を支える骨(歯槽骨)の状態を確認することが出来ます。また、次に行うプロービングも、やみくもに行うのではなく、このレントゲンの写真をもとにして行うことが出来ます。

歯周ポケット検査(プロービング)

歯周ポケット検査「プロービング」を行います。「プローブ」と呼ばれる器具を使用して、全ての歯の歯周ポケットの深さを測定し、記録します。これによって、どの歯の周りのどの部分がどの程度、歯周ポケットが深くなっているか=歯を支える骨(歯槽骨)が歯周病で溶かされているかがわかります。

歯周病の治療

ブラッシング指導(TBI)

歯周病の治療には、正しい方法でのセルフケア(ブラッシング)が必須となります。決して歯科医院で治療して終わりというものではありません。歯周病の治療では、ご自身による常日頃からのブラッシングと、歯科医院で行う治療は自転車の両輪のようなものなのです。
正しいブラッシング方法を身に着けて頂き、バイオフィルムを破壊し、プラークを除去し、歯周病の原因となる細菌をできるだけ繁殖していない状態を継続することが非常に大切なのです。

スケーリング(歯肉縁上の歯石除去)

「スケーリング(歯肉縁上の歯石除去)」では、歯科衛生士が「手用スケーラー」や「超音波スケーラー」という器具を使用して、歯肉(歯ぐき)よりも上の見えている部分(歯肉縁上)の歯垢や歯石を徹底的に除去していきます。

ルートプレーニング(歯肉縁下の歯石除去)

歯垢や歯石は、歯肉(歯ぐき)に隠れている部分(歯肉縁下)にも溜まっていることが多いため、必要に応じて「ルートプレーニング(歯肉縁下の歯石除去)」を行います。ルートプレーニングでは、歯肉縁下のため、そのまま行うと痛みを伴うことが多いため、いくつかのパートに分け、歯ぐきに麻酔を注射して、痛みを感じにくい状態で行います。

歯周外科治療(フラップ手術)

歯周病の状態によっては、必要に応じて外科的治療を行う場合もあります。これはフラップ手術といい、歯茎を部分的に切開し、直接目視しながら、歯石や病巣を取り除き、その後縫合する方法です。

メインテナンス

歯周病は、歯科医院で歯石を除去したら完治するといった類の病気ではありませんし、非常に再発しやすい病気でもあります。そのため、定期的に歯科医院を受診し、メインテナンスを受ける必要があります。また、年に2~4回程度、定期的にメインテナンスを受けることで、再発の兆候があっても早期に治療が可能となります。